メタバースにおける「滞在時間」を考えます。最近、Spatial.ioにアナリティクス機能が実装され、この更新によりUnityベースで作られたワールド内での訪問数、滞在時間、そして売上の三つの重要な指標が見える化されました。
上記は、わたしたちが作っている東京キティサーキットシリーズのメタバースワールドです。2023年1月から2月29日までの訪問数が38.7K、平均滞在時間が8分となっています。これは、Webサイトの滞在時間と比べると4倍以上高いですね。
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メタバースの売上
メタバースの売上について、Spatialでは、独自の通貨「Spatialコイン」を使用しています。この通貨はアメリカドルで購入可能で、メタバース内で様々なお買い物に利用できるシステムです。これは、セカンドライフのリンデンドルと似た概念で、ブロックチェーンとは独立しています。
上記期間では1.8Kコイン(約2,700円相当)の売上がありました。しかし、私自身がメタバース内で積極的に物を売っているわけではないため、「メタバースの売上」という点で、この数字は参考になりません。
メタバースの訪問数
メタバースへの訪問はどのように発生するでしょうか?メタバースでの集客には、SNS、動画、プレスリリース、広告といったWeb2.0の手法が引き続き有効ですが、メタバース固有のユーザー層や文化の理解が必要です。
メタバース各プラットフォームは、独自のユーザー層と文化を持ち、これらは企業主導だけでなく、ユーザーが形成するコミュニティによっても大きく影響されます。そのため、プラットフォームの文化を理解し、そこに合致した企画を考え出すことが求められます。
しかし、特定のプラットフォームに出展(ワールドを作成)したからといって、自動的にユーザーが訪れることはあまり期待できません。アンケート調査では、「メタバースを利用した経験がある人」はまだ少なく、集客は主にWeb2の手法に頼ることになります。
結局のところ、Web2.0の集客に頼るのだとしたら、どの着地点(メタバースプラットフォーム)でも一緒じゃないのか?と思われるかもしれませんが、それは違うのです。
メタバースサービスにおいては、ほとんどが「アカウントの作成」が必要であり、訪問者がすでにアカウントを持っているかどうかが、訪問の敷居を下げる重要な要素となります。さらに、Webサイトのように、ある程度決まったフォーマットでナビゲートできるような統一性がなく、各プラットフォームのナビゲーション方法が「バラバラ」です。これはユーザーに「操作方法の学習を強いる」ことであり、感覚で操作できるスマホと比較して、訪問のハードルはかなり高いです。
ユーザーがアカウントを作成する動機としては、そのメタバースサービスを使用している友人がいるか、メディアでその名前を耳にしたことがあるか、そのハードルを乗り越えるほど面白い企画があるのかといった、「コミュニティ」「ブランド」「コンテンツ力」の影響が大きいです。
結論として、メタバースの集客戦略はWeb2.0に依存していますが、訪問数を増やすための鍵は、「コミュニティ」「ブランド」「コンテンツ」を重視しているメタバースプラットフォームを選ぶことが有効と考えています。当然、クローズで使いたい場合や、コストとのバランスはありますね。
特にWeb2.0にない要素である「コミュニティ」との、企業としての付き合い方は重要です。コミュニティがあるメタバースプラットフォームであれば、初心者を教える人たちがいたり、助け合う文化も醸成されます。
メタバースの滞在時間がWebサイトの滞在時間より長い理由
メタバースの滞在時間がWebサイトに比べて長くなる主要な理由の一つに、イベント主体の性質が挙げられます。加えて、メタバース内での活動は「情報探索」よりも「コミュニケーションや体験」に重きを置くことが多く、これが滞在時間を伸ばす要因となっています。
イベント主体の性質
メタバースはイベントや体験を中心とした空間が多くあります。コンサート、展示会、ワークショップなど、多彩なイベントが定期的に開催され、ユーザーを引き寄せます。これらのイベントは単に情報を提供するだけでなく、参加者同士のインタラクションや共有体験を生み出すことで、より長い時間メタバース内で過ごす理由となります。
探索と体験の重視
メタバース内の活動は、Webサイトでの情報検索とは異なり、探索と体験に重点が置かれます。ユーザーは情報を探すのではなく、新しい体験を求めて仮想環境を「探索」します。この探索行動は、新しい場所や人々、活動との出会いを促し、そのプロセス自体が楽しみとなります。そのため、ユーザーはメタバース内で新しい発見を追求するうちに、気づかないうちに長い時間を過ごしていることがあります。
没入感とインタラクティブ性
メタバースの高い没入感とインタラクティブ性も、滞在時間が長くなる要因です。3D環境やリアルタイムのインタラクションによって、ユーザーはその世界に「存在している」と感じ、現実世界の時間を忘れがちになります。加えて、他のユーザーとの交流や共同作業は、より深い関わりを促し、滞在時間を延長します。
コミュニティとの結びつき
メタバースは、同じ興味や目的を持つ人々が集まりやすいため、強いコミュニティを形成しやすい傾向にあります。これらのコミュニティ内での活動やイベント参加は、メタバース内での滞在時間をさらに延長する要因となります。ユーザーは共有された体験を通じてコミュニティに深く関わることを求め、それが長時間の滞在に繋がります。
以上の要素—イベント主体の性質、探索と体験の重視、没入感とインタラクティブ性、そしてコミュニティとの結びつき—が複合的に作用し、メタバースではユーザーがWebサイトよりも長い時間を過ごすことになります。このような環境は、単に情報を検索するのではなく、ユーザーの関心を惹きつけ、彼らを長く留まらせるのです。
滞在時間をWeb2と比較できるのか?
WebサイトとSNSの滞在時間を比較しても意味がないように、Webサイトとメタバースの滞在時間を比較しても意味がないように思います。
Webサイトは非常に効率的なメディアで、ユーザーは強い「検索意図」を持っています。メタバースには、検索意図がありません。ただし、「長くその企業に触れる」ということ自体は、ブランド・ロイヤルティを高めることには貢献するでしょう。
メタバース・XRがどのようにマーケティングなどに影響を与えるのか?17Campusでは実証実験しています。ご興味ある方、ぜひご参加ください。